スリランカの「破産」宣言 深刻な経済危機の背景とは
首相による「破産」宣言
インド洋の島国スリランカのウィクラマシンハ首相は、5日の議会演説において、国の「破産」を宣言した。
今年の初めから深刻な経済危機に直面してきたが、危機的な状況は来年以降も続き、長期化すると見られている。
ウィクラマシンハ首相は「2023年も困難に直面する」と話し、「これは真実であり、現実だ」と言葉を続けた。
また、スリランカの現在のインフレ率は50%程度で、「年末までには、インフラ率が60%になる見通しである」と語った。
金融支援獲得に向けた国際通貨基金(IMF)との交渉についても説明した首相は、「過去には発展途上国としてIMFと協議をしてきたが、今は破産国家として協議している」と述べ、交渉は以前にも増して困難且つ複雑になるという。

混乱するスリランカ国内
スリランカは、外資準備高が記録的ともいえる低水準にまで落ち込み、食料や燃料などの輸入品の支払いに必要なアメリカドルが不足。
ガソリンなどの燃料不足は深刻で、5日には給与所で、給油をするために車に乗って数日間並んでいた60代の男性が死亡しているのが発見されたという。
国内は混乱を極め、国民の一部は権力を独占しているゴーターバヤ・ラージャパクサ大統領一族への批判を強め、抗議活動が広がっている。
スリランカの最大都市コロンボでは、国会議事堂前に国民が集まり警官隊と衝突したり、抗議デモに参加している国民に強力な放水が浴びせられたりする事態にまで発展している。

スリランカとはどんな国なのか?
スリランカの正式国名は、スリランカ民主社会主義共和国。
南アジアのインド亜大陸の南東に、ポーク海峡を隔てて位置する共和制国家である。
旧国名はセイロンで、領土内にある島はセイロン島と呼ばれ、紅茶の「セイロンティー」がよく知られている。
首都はコロンボ郊外に位置するスリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ。人口は約2200万人。1948年2月4日、イギリスからセイロンとして独立。
1972年に国名をスリランカ共和国に改称し、英連邦の共和国となる。
その後、1978年に現在の国名になっている。2021年3月、スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんという女性が、名古屋入国管理局に収容中、死亡する事件があり、遺族によって刑事告訴や損害賠償請求が起こったというニュースを覚えている人も多いであろう。

経済危機の背景
今回のスリランカの経済危機は、パンデミックにより環境客が激減し、観光業の衰退を招いたことが大きな原因として挙げられる。
さらに、2月からのウクライナ紛争により、食料や燃料の購入が困難になったことで、危機が広がった。
物資の不足によりインフレが進行、食料や燃料を入手することが困難になり、国内では生活苦を理由に3月頃からはデモや暴動が多発。
マヒンダ・ラージャパクサ前首相は、混乱の責任を取り5月9日に辞任に追い込まれている。
その後、現職のウィクラマシンハ首相が就任。
しかし、経済危機は収まる気配がなく、4月18日に期限を迎えた約7800万ドル(日本円にして約105億円)の米ドル建て債の利払いの支払いができなかった。
1カ月の猶予期間を経ても支払いはできず、5月18日にはデフォルトとなっている。
デフォルト以降は、政府により借り入れが困難になり、経済危機はさらに悪化。
ガソリンがほとんど手に入らず、給与所には長蛇の列ができている他、食料も手に入らないため、1日3食食べられない国民が増加している。

今後の行く末は?
スリランカの通貨、スリランカルピーは今年になり暴落。
今年の初めは1ドル=200ルピー付近で推移していたレートは、6月には360ルピーと、価値が半分以下にまで暴落する事態に陥っている。
スリランカだけに限らず、パンデミックによりサプライチェーンの混乱やウクライナ紛争の影響で、全世界的に燃料や食料は入手困難。
日本国内でも、食料品などの値上げが相次ぐ事態になっているが、中東やアフリカの途上国ではスリランカ同様燃料や食料が手に入りにくく、経済危機になる可能性がある国が増える事態となっている。
サプライチェーンの混乱やウクライナ紛争の終わりが見えなければ、世界的なインフレや発展途上国の危機も続いていくだろう。
ラージャパクサ大統領は、6日自身のTwitterで、ロシアのプーチン大統領に燃料輸入の支援を要請したことをツイート。
プーチン大統領と電話会談を行ったことを明らかにし、燃料以外にも航空便の再開を要請し、観光、貿易、文化などの分野で二国間関係の強化が重要であることを話したという。
まだまだ終わりが見えない経済危機。今後の行方に注目が集まる。

