政府が検討している、チケット転売防止策とは?
チケット購入時にマイナンバーカードを活用する案
マイナンバーカードの普及を目指す政府が、ライブやスポーツ観戦のチケットを購入する際に、マイナンバーカードの活用を検討していることがわかった。
松野博一官房長官が11月28日に行った記者会見で明らかにした。
松野官房長官は、「マイナンバーカードはオンラインでも確実に本人確認ができる、安全安心なデジタル社会のパスポート」だと強調。
「民間のサービスでも、国民に利便性を感じてもらえる場面を多く作っていけるよう、デジタル庁を中心にさまざまな検討を行っている」と説明した。
チケットの購入時やイベント当日の入場時に、マイナンバーカードを提示することで本人確認をするというもの。
マイナカードを活用する機会を増やし、幅広く普及する目的に加え、多発している第三者への高額転売を防ぐ狙いもあるという。
河野太郎デジタル担当大臣は、デジタル庁に対してプロスポーツをはじめとした各関係団体と具体的に協議をするよう指示を出し、チケットの販売にマイナカードを使用することができるかどうか実証実験を実施し、調べているという。
実験結果を受けて課題の検証を行い、早期に導入することを目指している。
本人であることを証明するには電子証明書機能を使い、チケットを購入する際に利用者がマイナカードをスマートフォンにかざし、内蔵したICチップを通じて情報を確認できる仕組み。
さらに、チケットの転売を防ぐため、イベント当日の入場時にもマイナカードをかざし、本人であるかどうかを確認する。
最近のチケットはインターネットで予約し、コンビニエンスストアの発行機などで紙のチケットを発行して入場するシステムがほとんどだが、マイナカードを使用することで紙のチケットは不要になり、しかも本人確認が徹底でき、第三者の入場や高額転売の防止にもなるというメリットがある。
2022年度末までに、ほぼすべての国民がマイナカードを所持することを目的に掲げている政府。
マイナカードの普及が行政のデジタル化のカギを握るとして推進を進めており、先日は2024年秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化する方針を発表したばかりだった。
運転免許証との一体化を進める方針も示しているほか、持ち歩く必要がないようスマートフォンに機能を搭載する準備も進めている。
チケット販売にも導入することで、さらなる普及を推進していく方針だ。
しかし、政府の方針とは裏腹に、国民の中にはマイナンバーカードの取得にメリットを感じられないとの声は根強く、現状は6割の申請率に留まっている。
松野官房長官は、「民間団体や事業者の意見や要望をしっかりと聞き、利用拡大を進めていく」と話した。

問題となっているチケットの高額転売
チケットの高額転売についてはかねてから問題になっており、2019年に“チケット不正転売禁止法”が施行されて営利目的での転売が禁止されているが、その後もインターネットで高額で転売されている事例が繰り返されている。
中には、アイドルのチケットが正規料金の数十倍で転売されているケースもある。
政府が進めているシステムを導入することで、イベントの主催者は、会場にマイナンバーカードを読み取る機械を設置しなければならなくなるほか、スマートフォンを持っていない人の本人確認をどうするか、家族分のチケットをまとめて購入した場合の本人確認をどうするかなど、導入に向けての懸念事項がたくさんある。
マイナンバーカードの取得を迷う人の中には個人情報の漏えいが不安だという人も多いが、その不安を払拭できるか、情報管理の徹底は大丈夫なのか、課題は山積みの状態である。

チケットの高額転売について正しい理解を深めよう
チケットの高額転売に関して、「政府広報オンライン」には「チケットの高額転売は禁止です!~チケット不正転売禁止法」と題した文章を掲載し、注意喚起を呼び掛けている。
中には詳しい知識を持たず、目当てのライブやスポーツを観たい一心で、高値によって転売されたチケットを購入した経験がある人がいるかもしれないが、よく理解しておくことが必要だろう。
人気のアーティストのライブやスポーツの試合などのチケットは競争率が高く、抽選で漏れてしまう人は多い。
そのため、インターネットのチケット転売サイトやオークションサイトでチケットが売られていたら、高額だとしても購入して見に行く人が後を絶たない。
しかし、そもそもチケットがなかなか手に入らない理由の1つに、“転売ヤー(転売屋)”と呼ばれる業者の存在があることをご存知だろうか。
転売ヤーは、希少価値が高いチケットを初めから転売する目的で大量購入し、オークションサイトなどを利用して高額で転売しているのである。
転売ヤーがチケットを高額でいくら転売しても、イベントの主催者や出演者、選手達には何の利益も出ず、転売ヤーだけが儲かるという仕組み。
チケットを手に入れたいがために高額を出して購入しても、得をするのは転売ヤーだけなのである。
そして、主催者がチケットの転売を禁止していた場合、転売チケットは無効となり、入場できないこともある。
最近はコロナウイルスの感染や台風などの自然災害により、イベントそのものが延期や中止になる場合もあるが、もし高額転売されているチケットを購入したイベントが中止や延期になったときに払い戻しを希望したとしても、返金してもらえるのは正規の料金分だけ。
正規の料金にプラスして支払った金額が戻ってくることはない。
しかも、この場合も主催者が転売を禁止していれば、正規の料金も返金不可となる場合もある。
正しい知識を身に付けて、無駄な高額を払うことがないように、また、転売ヤーに儲けさせることがないように十分気を付けたいものである。
