社会・文化

北野武監督の最新作『首』、完成!本能寺の変を描いた意欲作で異色作に高まる期待

6年ぶり19作目の新作映画

北野武監督待望の最新作の完成報告会が、2023年4月15日に東京都内で行われた。

前作『アウトレイジ 最終章』(2017年)以来6年ぶりとなる新作は、戦国時代の“本能寺の変”を描いた内容で、タイトルは『首』。

完成報告会には北野監督のほか映画に出演した西島秀俊、加瀬亮、中村獅童、浅野忠信、大森南朋らが顔を揃えた。

『首』は監督として19本目の作品で、自ら執筆した小説を映画化したもの。

監督、原作のほか、脚本や編集も手掛けており、さらに“ビートたけし”として羽柴秀吉役で出演もしている。

今作は、北野監督4作目の『ソナチネ』(1991年)と同じ時期に構想を始め、以来約30年間にもわたって温めていた題材。

生前の巨匠・黒澤明監督が、「北野くんがこれを撮れば、『七人の侍』と並ぶ傑作が生まれるはず」だと期待していたという。

しかし、完成報告会後に行われた会見で北野監督自身は「構想30年は3週間の間違いだと思います」と発言し、笑いを取っていた。

時代劇について聞かれた北野監督は、「NHKの大河ドラマをよく見ているが、どうもきれいな出世物語で人間の業や欲、裏切りがあまり描かれていない」と感じており、「自分が撮ればこうなる」という発想から今作の制作を思い立ったことを明かした。

北野監督独自の解釈で“山崎の戦い”から“本能寺の変”までが描かれている今作。

「ここ何年かの歴史ブームで“本能寺の変”もよく出てくるが、資料を読むと起こった理由には80くらいの説がある。

『秀吉の恩返しは出来レースで、裏で秀吉がかなり動いたな』と考えたことが映画の構想」だと説明。

過去の北野作品の特徴でもある笑いやバイオレンスなどのエッセンスを今作にも散りばめながら、戦国武将、忍、芸人、百姓などさまざまな人物の野望や裏切りを描いた作品となっている。

映画の制作には「大分苦労した」とも語り、「今回の映画が出来上がったのは、素晴らしい役者さんとスタッフのおかげだと思います」と感謝の言葉を口にした。

北野作品に21年ぶりの出演となる西島秀俊

今作には男同士が絡む場面もあり、「男同士が絡み合うシーンをNHKは避けるが、殿様に命をかけるということは、そういう関係である」との思いを明かした北野監督。

「そういう場面をなくして戦国時代を描くのはおかしい」との考えだったことも説明。

「戦国大名なんて悪い奴らだから、一般の人達が死んでも、何も関係ないと思っている。

その残酷さと、生と死をバックボーンにした生き方、男同士の死を前にした関係を上手く描ければ」と語った。

会見には制作のKADOKAWA代表取締役社長の夏野剛氏も出席し、「(製作費の)15億円は、全部うちが出しています」と、スケールの大きさをアピール。

出演した役者陣については、「脚本を書きながら、『これはこの人』という風に」決めていったという。

明智光秀役で、『Dolls』(2002年)以来21年ぶりに北野監督作品に出演した西島秀俊は、出演のオファーについて「ちょうどマネージャーから話が来ていると聞いた数日後に、バラエティー番組で監督とご一緒して、『話聞いてる?』『はい!』『頼むね』『わかりました』」と簡単なやり取りで出演が決まったことを明かした。

「(出演が)決まって非常に嬉しかった」と喜びを語り、『Dolls』については「自分が成長した姿を見せようとは絶対に考えないように、無欲に監督の頭の中にある作品をなんとか現実の世界に出すために、自分も力を出し尽くそうと、毎日現場に臨んでいました」と語り、「とても幸せな毎日でした」と振り返った。

北野監督独特の撮影手法

会見では、映画の撮影で印象に残っているエピソードや北野監督の撮影手法についても話が及んだ。

印象に残ったエピソードとして、撮影の終盤に北野監督の希望により追加で1シーン撮影したときの様子を挙げた西島。

「大きなセットを組んで、新しくシーンが追加されたのでワクワクしながら現場に行った」という。

しかし、「撮影は1カットで終わって、『こんなセットを作ったのに、“引き”の1カットで終わるのか…』」と驚いたことを話した。

「“寄り”のカットの撮影もあるのかなと気持ちを込めて演技をしていましたが、一瞬で終えて帰りました」とのこと。

北野監督は、「大島渚監督に『大事なシーンは“引き”で撮るべきだ』と言われたことが印象に残っていて、『これだ!という風に寄って撮り、印象付けるのは下品だ』とよく言われていた」ことから、癖になったのだと説明。

また、西島は北野監督の撮影手法についても言及し、「(映画の登場人物達は)常に死がそばにある状況の中で生きているので、滑稽なことと悲惨なことが本当に隣り合わせ。

すごく笑っているのに、その後に突然信じられないくらい悲惨なことが起きたり、悲惨なのに思わずちょっと笑ってしまったり、監督にしか描けない世界観や面白さだ」と感じていたという。

織田信長を演じた加瀬亮は、「自分に信長役をくれるのは、北野監督くらいしかいない」としたうえで、「残酷なシーンもたくさん出てきますが、最終的には不思議とすごく品のよい映像に収まっていることが、ほかの監督とあきらかに違う点だと思う」と話した。

加瀬の発言を受けて「私と三池(崇史)監督の違いです」とおどけ、「私の方が、教養があって家柄がいいので」と笑わせた北野監督。

当初は、映画に出演するつもりはなかったが、スタッフから「出ないとちょっと…」と言われ、「『なんでこんなジジイの秀吉がいるんだよ』」と思いながら出演したことも明かしていた。

映画は、今秋に全国公開される。

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。