イーロン・マスク氏、Twitter買収後に進める大胆改革の行方は?
従業員に対する食事の無料提供廃止
アメリカの実業家イーロン・マスク氏が、Twitterを440億ドルという破格の額で買収したのは10月27日。
マスク氏は10月31日に、Twitterの最高責任者(CEO)に就任し、早速様々な改革を行っている。
マスク氏は4月にTwitter買収を宣言してから合意に至るまでの間、買収を撤回するなど二転三転し、ニュースを賑わせていた。
買収後も従業員の大量解雇に踏み切るなど大胆な改革を実行し、世間を賑わせ続けている。
改革には批判の声も大きい中、11月11日に「ニューヨーク・タイムズ」が、サンフランシスコにあるTwitter本社のカフェテリアにて無料で提供されていた食事の廃止を検討していると報じた。
経費削減のために、無料の提供を廃止し、従業員に負担させる計画だという。
これを受け、マスク氏が13日に投稿したツイートによると、過去12か月間にTwitter本社で提供されたランチ1回あたりのコストは推定400ドル以上で、年間にすると推定1300万ドル(約18億円)のサービスコストがかかっているという。
しかし、これに対しTwitterの元社員は1人1日あたりの食費は20~25ドルだと反論している。

認証バッジの有料サービス再開の延期を発表
11月15日にはTwitterのアカウントが利用者本人のものであると証明する認証バッジを有料で付与するサービス「Twitter Blue」を11月29日に再開すると発表。
認証バッジは青いチェックマークで、サービス再開後に認証済みの名前を変更すると、Twitter側がサービスの条件を満たしていることが確認できない場合、認証バッジは削除されてしまう。
これまで認証バッジは政治家や芸能人など著名人のアカウントにのみ付与されていたものだが、収入源の拡大を目指して一般向けにも有料サービスを始めたもの。
しかし、このため偽アカウントが急増し、11月11日にサービスを一時停止した。
当初は11月19日からサービスを再開するとの見通しを示していたマスク氏だが、10日間延期されたことになる。
元々、Twitter Blueは米国などで提供されていた新しい編集機能などを試せるサブスクリプションサービスで、月額4.99ドル(約700円)だった料金が、7.99ドル(約1100円)に引き上げられていた。
認証バッジに関してはTwitter Blueの加入者であれば誰でももらえるため、著名人と一般人の区別がなくなる。
つまり、公式という意味もなくなるため、公式アカウントが識別できる別のラベルを用意するとの情報もある。

長時間労働か退職か2択を迫られる従業員
マスク氏は、買収後に7500人いる従業員の約半分を解雇したが、残る従業員に対しては在宅勤務を禁じ、長時間労働を要請。
厳しい長時間労働を受け入れるか、退職するかどちらかを11月17日までに選択するよう通告したとアメリカのメディアが報じた。
マスクは社内向けにメッセージを送り、「今後、画期的なTwitter2.0を構築し、競争が激化する世の中での成功を目指し、極めてハードコア、つまり集中的な長時間労働をする必要がある」と発信。
「並外れたパフォーマンスだけが合格できる」と従業員に伝えた。
従業員は、11月17日午後5時(日本時間18日午前7時)までに指定されたリンクにアクセスし、「新しいTwitter」にコミットメントするよう指示されており、使わなかった場合は給与3か月分の退職金が支払われ、解雇されるという。
買収直後の従業員大量解雇の影響は日本法人にも飛び火しており、広報部門などの社員が多数解雇され、ニュースやスポーツ、エンターテイメントなどの情報の更新が一時ストップする事態になった。

買収までの動き
アメリカの電気自動車メーカー“テスラ”のCEOを務めていたマスク氏が、Twitterの株式9%余りを取得し、筆頭株主になったのは2022年4月5日のこと。
4月後半には、マスク氏が約6兆円もの巨額な買収資金を調達する目処がつき、株式の公開買い付け(TOB)を検討していると報じられた。
一旦は買収に関してTwitter社との合意に至ったが、6月7日にはTwitterの偽アカウント数などを確認するための情報提供が不十分との理由で、買収撤回を示唆。翌7月に撤回を表明すると、その影響で7月11日の米国市場で、Twitter株がその前の週の終値に比べて10%以上下落。
約31億8000万ドル(約4300億円)相当の時価総額が吹き飛ぶ事態になった。
その後Twitter側が提訴するなどの問題に発展したが、10月5日に撤回から一転、再び買収の意向を示した。
正式に買収する前の10月21日は、従業員の約75%を削減する計画が報じられていた。
正式買収後の10月28日には、Twitterのスパムアカウントの数について誤解を招く情報提供を行ったとの理由で、パラグ・アグラワルCEOやネッド・シーガルCFO(最高財務責任者)、ビジャヤ・ガッデ法務/ポリシー担当責任者を解任。Twitterの上層部の解雇にも踏み切った。

気になる今後の行方
アーロン氏は買収前に「編集ボタン追加」「ボット撲滅」「10億人のユーザー獲得」などの目標を掲げていた。
16日のツイートで、自身の勤務時間をいずれ削減し、最終的に新たなトップを見つける見通しを示したマスク氏。
「買収後に必要な組織再編の一連の活動がある。
その後は、Twitterでの自分の時間を減らす」として、近々Twitterの組織再編も完了させることも明かしている。
Twitterは日本でも多くのユーザーがいるSNSの代表格。
かつて自動車業界や宇宙産業の分野で数々の革命を起こしてきたマスク氏が、今後Twitterをどのように改革していくのか、多くの人が注目している。
