あのジーマが消える? 輸入卸売販売先が事業終了
アメリカで生まれ、1997年に日本に渡ってきたZIMA(ジーマ)。
その日本での発売以来、ファッション、アート、ミュージックシーンで常に若者の間で多大な支持を得てきた。
振り返ればいつもそばにはジーマがあった、という方も多いのではないだろうか?そのジーマが、今の在庫限りで巷から姿を消すかもしれない、というさみしいニュースが年明け早々飛び込んできた。
ジーマの輸入と卸売販売を手掛けているモルソン・クアーズ・ジャパン株式会社が2021年12月31日に日本法人としての業務をひっそりと終了していたのだ。
この会社が取り扱っていた主な商品は、ジーマの他、ブルームーン、ミュラージェニュインドラフト、シンハー、コブラ、ルイレゾン、アスボールと、バー巡りをしている人ならなじみのある名前ばかりだろう。
同社によると、これらの商品の出荷は昨年末で終了し、現在市場に流通している在庫がなくなると販売が終了すると発表した。
事業終了の裏にコロナ禍での厳しい事情
同社は昨年11月には従業員や取引先に対して日本での事業の撤退を通告していたという。
酒類の販売は年々厳しくなってきている中で同社は業績の改善に取り組んできた。
しかし、2020年に始まった新型コロナウイルスの流行で外出が自粛され、それに追い打ちをかけるように緊急事態宣言で酒の提供が停止されるなどして全国の飲食店の売り上げに多大な影響を与えた。
それが今回の撤退につながったようだ。
株式会社東京商工リサーチが2020年全国の酒類の卸売業460社、小売業702社を対象に行った調査によると、休廃業や解散件数が過去10年で最多であったという。
休廃業・解散は酒類卸売業で109件と前年比36.2%増加、酒類小売業は225件で前年比11.9%増加した。
理由はやはり新型コロナウイルスによる営業時間短縮、酒類の提供の禁止が飲食店を苦境に追い込み、その余波が酒類販売業を襲ったということである。
酒類卸売業の2020年の売上高は3兆3,034億6,400万円で前期に比べ5%減少、純利益は141億9,800万円で前期比33.8%減少した。
酒小売業の売上高は3,933億8,500万円と前期比6.5%の増加を見せたものの、純利益は52億5,600万円と前期より19%減少している。
小売業の売上高の増収はコロナ禍で家飲みが増えた特需によるものだが、純利益は卸売業、小売業のどちらも減少している。
また、酒小売業では大手と中小、零細企業の間での業績二極化が拡大しており、大手が家飲み特需の恩恵を受けた形となった。
アメリカ生まれ、日本育ちのジーマ
このモルソン・クアーズ・ジャパンが輸入販売していたジーマは、どんな飲み物だったのか?
生まれはアメリカで、クアーズ社によって製造され1993年に販売が開始された。
元々はビールの代替品の低アルコール飲料として市場に売り出されていた。
ジーマという名前はロシア語で冬を意味する。当初はジーマクリアモルトという名前だった。
アメリカでは1980年代からクリアブームで透明性や純度の高いものがもてはやされはじめ、1990年代にはペプシコ社の透明なクリスタルペプシやアップル社の透明ボディーiMacが発売されるなどしてクリア旋風を巻き起こした。このジーマもその流行の波に乗った商品の一つだ。
クアーズ社は最初の1年で5,000万米ドルを投入してジーマをアメリカに広めようと努めた。
ジーマは若い女性の間で人気となったが、クアーズ社はさらに若い男性をターゲットに1995年にジーマゴールドを出したものの惨敗。
ジーマゴールドは姿を消してしまった。反対にアメリカではジーマは女みたいなヤツが飲むものというイメージが定着してしまった。
日本にジーマが渡ってきたのは、ちょうどそんな頃である。
日本での販売は1997年。フレッシュでクリーン、クリアな味わい、そして飲みやすさが20代の若者の間で受け入れられ、洗練された形のボトルから直接飲むというスタイルが流行した。
2008年ジーマのアメリカでの製造が終了したため、これ以降製造は中国に移行、味も果実酒をベースとしたリキュールになった。
2009年にはベトナムで製造されることになり、栓抜きのいらないマキシキャップに変更された。
2014年松田龍平さんの「Love simple」「限りなく透明な世界へ」、そして2020年小島よしおさんの「飲めばいつでもお祭りキブン」というジーマの広告がうたれたのを覚えておられる方もいるだろう。
モルソン・クアーズ・ジャパン社は2021年7月にジーマをさらに広い世代で楽しんでもらおうとリブランディングを行い、「無限大の可能性」を意味する新しいロゴを発表したばかりである。
この際、家飲みを視野に入れて、家庭でストックしやすい6缶のパックや、多様化する食に対応できる新しいフレーバーである「レモン&ライム」や「オレンジ&カシス」を発表した。
ネットでは、ジーマを惜しむ声や販売継続を望む声が次々と出ている。
なかでも、しばらく飲んでいなかったが、懐かしいので在庫を探して飲んでみたいという人が結構いるようだ。しばらくは一部のファンの間で在庫ジーマの争奪戦が繰り広げられるかもしれない。